食いしばりや歯ぎしりは、わざとそうしているものではなく、癖のようなもです。食いしばりとは、知らず知らずのうちに奥歯を噛み締めたり、歯をギリギリしてしまったり、強い力で歯と歯を噛みあわせている状態です。
では、なぜ食いしばったり歯をギリギリしてしまうのかというと、大きくわけると「咬み合わせの問題」「意識的な問題」「精神的な問題」の3つの原因が考えられます。
まず考えられるのが不正咬合です。過蓋咬合(深い咬み合わせ)や開咬(ポカン口)は奥歯をよく使うためダメージが溜まりやすく、反対咬合(受け口)や叢生(デコボコの歯)も特定の歯に負荷がかかることが多いです。また、治療した歯の高さがあっていない場合も、その歯や対合の歯に力が加わり、ダメージを受けます。
スポーツ選手に多いのは、力を入れる瞬間に奥歯をグッと噛みしめることがあります。実際歯を食いしばることで筋力が4~6%程度もアップするとも言われており、アスリートなどは意識的に食いしばります。また、食べるときに奥歯だけを使う人も、それが癖になり就寝中にも奥歯で食いしばってしまう傾向があります。
いわゆる「ストレス」による食いしばりで、クレンチング症候群と言われるものです。強いストレスや不安、日常的に緊張することが多いと、無意識に歯を食いしばってしまいます。何かに集中しているときや就寝中、無意識の中で食いしばったり歯ぎしりをしてしまうようになります。
TCHとは「Tooth Contacting Habit」の略で、日本語にすると上下歯列接触癖といいます。歯列接触癖というのは「上下の歯が当たる癖」という意味ですが、実は安静時、上顎の歯と下顎の歯は接触していない状態が正解なのです。上下の歯が接触する時間は、食事や会話を含め、1日時20分程度が正常だと言われています。
TCHはスポーツ時や緊張時、睡眠時の食いしばりほど大きな力はかかっていませんが、弱い力でも長い時間歯が接触することで歯や顎には負荷がかかってきます。これが続くと、歯や歯の修復物が割れたり、歯茎へのダメージから歯周病が悪化したり、顎関節症につながることもあります。
TCHの主な原因はストレスとも言われているため、TCHを改善するにはストレスを溜めない生活を送ったり、意識的に上下の歯が噛まないように常に心がけることが必要となります。
食いしばりや歯ぎしりが長期的に続くと、様々な問題を生じます。まず直接ダメージを受けるのは、力をダイレクトに受ける歯や顎の骨です。
一つは咬合性外傷といって、咬み合わせが原因でおこる歯周組織の病気です。これにより、歯根破折(歯の根が折れる)・歯の補綴物(詰め物・被せ物)の破損・歯の咬耗・知覚過敏・歯周病といった口腔内のトラブルを発生したり、顎が痛い・開口しにくい・顎から音がなるなどの顎関節症の症状がでたりします。特に、神経を取った歯がある場合などは歯の根が折れやすくなっていたり、奥歯は特にダメージを受け続けるため、奥歯から徐々に歯を失い、咬合崩壊といって、バランスを崩した咬み合わせが原因で多くの歯を失う原因になることもあります。
また、食いしばる力で筋肉が緊張し、肩こり・頭痛・倦怠感などの不定愁訴につながることもあります。
食いしばりや歯ぎしりについては、残念ながら現在のところ根本的な治療法というのは確率されていません。そのため、症状が出たらその症状に合わせた対処療法を行っていくことになります。
しかし、その原因を自身で取り除く努力はできます。ストレスがたまりがちであれば運動をしたり、リラックスできるよう趣味や旅行を取り入れることで食いしばりが改善することもあります。
また、普段から奥歯でのみ食事を取っているのであれば、意識的に分散して咀嚼する練習をすることも有効です。
考えられる原因を取り除くことで、食いしばりから歯や顎を守ることを考えましょう。
近年、食いしばりや歯ぎしりが強い方に、咬筋ボトックス治療という、ボツリヌス菌を使った治療が行われるようになりました。ボトックス治療は、ボツリヌス菌が作り出すタンパク質を筋肉に注入することで、筋肉の動きを麻痺させてその活動をゆるめ、食いしばりや歯ぎしりの影響を物理的に減らす治療法です。
ボトックス治療というと美容外科などの小顔治療として広く知られていますが、最近では眼瞼痙攣(がんけんけいれん)や片側顔面痙攣(がんめんけいれん)、痙性斜頸(けいせいしゃけい)などに対する治療の効果が認められており、医療用として使用されています。
歯科では、このボトックスを咬筋に打つことにより、食いしばりや歯ぎしりの対策として使用しています。半永久的な効果はありませんが、咬筋を緩めることで歯や顎への負担を軽くします。
Before
After
咬み合わせと咬合力の影響で奥歯の多くを失うもしくは虫歯等で治療済みの歯となっていました。咬み合わせによってはこのように奥歯がダメージを受け続けるため、歳を経る毎に悪くなってしまいます。
治療では、インプラントと歯列矯正を併用し、しっかり咬み合わせを作り、咬み合わせの崩壊が起きにくい口腔環境を目指しました。
治療の内容 | インプラント治療・補綴治療と歯列矯正(マルチブラケットシステム)による欠損補綴と咬合再構成。 |
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期間・回数 | 1年8ヶ月・18回(カウンセリング・検査含む) |
費用 | 自由診療:ワイヤー矯正(マルチブラケットシステム)+インプラント(スタンダードプラン)✕2歯 総額 1,480,000円(税込1,628,000円)(調整料18回分含む) |
リスク・副作用 |
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食いしばりや歯ぎしりで歯や顎に症状が出た場合は、歯科医院での治療が必要です。食いしばりに対する歯科でのアプローチとしては、食いしばりを軽減する、もしくは食いしばりに対応できる咬み合わせを作る治療が必要です。(※1)
顎関節症の症状が出た場合は、スプリント(マウスピース)療法などでまずは炎症を抑えます。
「どうせ壊れるのだかから」と治療を怠ると、奥歯を失ったことが原因でドミノ倒しのように次々に歯を失うこともあります。
まずは治療をして、ナイトガード(食いしばりや歯ぎしりから歯を守るマウスピース)の使用を習慣化することで、咬合力から歯を守りましょう。
食いしばりや歯ぎしりは、自分では気づかないこともあります。家族やパートナーに睡眠時の歯ぎしりを指摘されて気がついたり、ある日鏡を見て自身の歯の擦り減りで食いしばっていたことに気がついたり、歯や顎に症状が出たことで歯科医院を受診し、歯科医師に指摘されてはじめて気がつくこともあります。もしかしたらこの記事を読んでTCHに気づいた人もいるかもしれません。
きっかけは何であれ、自身が「食いしばり・歯ぎしりをしている」と気づいたら、それに対し対策を行うことが大切です。例えばナイトガードがその一つです。
食いしばりや歯ぎしりは、徐々に、確実に歯や顎を侵食していく怖いものです。だからこそ歯の痛みや破損の症状が出ていなくても、歯を守るための予防が必要です。
虫歯や歯周病の予防だけではなく、自身の噛む力からお口の健康を守るためにも、予防歯科をご検討ください。当院でも、食いしばりや歯ぎしりに対するご相談は承っています。お気軽にご利用ください。
※1)ブラキシズムそのものを軽減する active control と,ブラキシズムが生じた際に障害が生じにくい口腔環境を作る passive controlの2種類に大別できる.
曜日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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診療開始 | 9:30 | 9:30 | 9:30 | 9:30 | 9:30 | 9:30 |
診療終了 | 18:30 | 18:30 | 13:00 | 18:30 | 18:30 | 17:00 |
休診日:・日曜
※日曜・祝日診療は下記診療カレンダーをご覧下さい。
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