むし歯治療

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むし歯とは

むし歯について

むし歯はほとんどの方が経験する病気

むし歯はほぼ全ての人が経験するとても身近な病気です。歯周病とならび、歯科の二大疾患とされています。厚生労働省の平成28年に行なった歯科疾患実態調査結果の概要(※1)によると、むし歯になったことのある歯を持つ人の割合は、20代前半でも76.6%、20代後半から30代前半では90.2%、30代後半になると99.3%以上となってきます。

つまり、どれだけ歯磨きをする人であっても、恐らく人生に1度程度は虫歯になってしまった経験があるということになります。皆さんもきっと、できて欲しくないむし歯。まずは、むし歯がどんなものなのかという基礎知識や、その治療方法、どうしたらできにくくなるのかといったことを知り、その予防法やなってしまった時の対処法をご紹介します。

※1)5歳以上10歳未満では処置歯または未処置のう歯を持つ者の割合は10%を下まわったが、25歳 以上85歳未満では80%以上と高く、とくに35歳以上55歳未満では100%に近かった

そもそもむし歯って何?

一口にむし歯といいますが、むし歯とは一体どのような状態のことをいうのでしょうか?

  • 穴が空いたらむし歯なのでしょうか?
  • 色が黒くなったらむし歯なのでしょうか?
  • 痛みが出たらむし歯なのでしょうか?

答えはすべてむし歯です。痛みがなく、穴が空いていなくても実は気づかないうちにできていることもあります。汚れがずっとついている部分や、歯に入った小さな亀裂、すでに入っている詰め物や被せ物と歯の隙間などは、特にむし歯ができやすいです。気づかずに放っておくとだんだん大きくなり、痛みが出てきたり、歯が欠けてしまいます。治療を繰り返すうちにどんどん歯が削られていき、最終的には歯を抜く治療が必要になってしまいます。大切なのは早い段階で気づいて、治療を始めることです。

むし歯はどうやってできるの?

むし歯はう蝕(うしょく)と呼ばれ、学術的にいうと『高濃度の有機酸がエナメル質を脱灰することで始まる。この有機酸は、食物に含まれている糖を、歯垢の中の細菌が発酵することによって、産生される。』と定義されます(むし歯が細菌によって引き起こされることは、1946年に McClureらによって証明されています)。わかりやすく言うと、お口の中に生息するミュータンス菌などのう蝕原因菌が、食べ物に含まれる糖を取り込み、それを分解することで酸が生まれます。通常、細菌は酸性状況下では増殖が抑制されますが、このミュータンス菌は酸に強く、お口の中が酸性の状態でもさらに酸を産生し続けます。この酸が原因で歯の表面が脱灰した状態となってしまうというわけです。

つまり、お口の中にはたくさんの細菌が住んでいますが、その中でも、むし歯の原因細菌とされる種類の細菌が食べ物の中の糖質を酸に変え、それが歯を溶かすことにできるほど濃度が高くなるため、むし歯という状態になってしまうのです。

※2)むし歯は自分だけでなく他の人にも移る感染症である

この記事の編集・責任者は歯科医師の田中 公之です。
DR田中

むし歯の進行と治療

むし歯は進行する病気です

むし歯はその深さによって呼び方が変わります。歯科では、CO、C1~C4まで5つのステージでその区別をしています。

進行 見た目 症状 治療

CO
歯の表面が白く不透明に濁る ガサガサしている

COは、ゼロではなく、カリエス・オブザベーション(caries observation)の略で、経過観察歯という意味です。これは、エナメル質の表面が酸で少し溶け始めた状態で、経過観察を行なったり、フッ素を塗って再石灰化を期待することもあります。この段階であれば、歯の溶けた脱灰という状態から生石灰化によって元に戻ることがあります。このため、わざわざ削って治療する必要はありません。

無症状 ・フッ素塗布
・経過観察

C1
表面が黒や茶色になる 溝が黒くなる

C1は、歯の一番表面である、エナメル質という部分に限局した小さいむし歯です。COのように元に戻ることはありませんが、エナメル質は固くむし歯の進行が遅いため、経過観察を行うことが多いです。見た目や大きさによっては削って治療することもあります。

無症状 ・フッ素塗布
・経過観察 
・詰め物で修復

C2
穴が開く 歯の内面が黒、茶色になる

C2は、むし歯がエナメル質を超え、歯の内側にある象牙質という組織まで進行したもののことを言います。歯の一番内部には、神経や血管の入っている歯髄と呼ばれる組織があるのですが、象牙質はその歯髄と接しているため、しみる症状を感じることがあります。
また、象牙質は柔らかく、むし歯の進行が早いため、この大きさまで行くと、早めに虫歯を取る治療する必要があります。また、虫歯を取ると、歯質を失ってしまうため、CR(コンポジットレジン)と呼ばれる白い樹脂で詰めたり、型取りをしてできてきたインレーと呼ばれる詰め物を歯にくっつける治療で補う必要があります。

冷たいものや甘いものがしみる ・詰め物で修復

C3
穴が開く 歯の内面が黒、茶色になる

C3は歯髄までむし歯の菌が感染してしまった状態です。ここまでくると、神経が直接痛みを感じ、何もしていなくてもズキズキ痛む自発痛や、冷たいもの、熱いものがしみる冷水痛や温水痛、噛むと痛む咬合痛などの症状が出ます。痛みが一度出て数日すると落ち着く場合や、何も症状がない場合もあります。
この状態になると、歯髄を取り除く治療を行い、その後歯を削った部分を補うために型どりをしてクラウンと呼ばれる被せ物を作らなければなりません。こういった治療を受けた歯は、差し歯などど呼ばれることもあります。

何もしなくても痛む
冷たい、暖かいものがしみる
噛むと痛む
・神経の治療
・大きな被せ物

C4
歯の頭がなくなり、根っこだけが残っている

C4は、むし歯が進み、歯の頭の部分がなくなり、根っこだけが残っている状態です。ここまでくると、根っこが弱く、人工物で歯を作っても支えることができないため、歯を抜かなくてはなりません。

何もしなくても痛む
噛むと痛む
・抜歯
・欠損補綴
この記事の編集・責任者は歯科医師の田中 公之です。
DR田中

むし歯の治療法

むし歯を削った後の修復方法

ごく小さなむし歯の場合

むし歯の治療を行う場合、虫歯になっている部分を取り除く必要があります。小さな虫歯であれば自由診療で削らずお薬で溶かす方法もありますが、ほとんどの場合はむし歯に侵された部分とその周囲を削って治療することになります。削った後は、それぞれの大きさに合わせて人工物によって補う必要があります。むし歯自体が小さいものならば、CR(コンポジットレジン)という光をあてることで固まる白い樹脂で詰めることができます。治療は一回で終わることがほとんどんで、見た目も治療しかどうかわかりにくく目立ちにくいという特徴があります。

ただし、CRははプラスチックで強度が弱く、水分に対しても弱いので、噛む力がかかる部分ではかけてしまったり、取れてしまうことがあり、時間が経つと劣化して色が変わってくることもあります。

小さなむし歯の場合

面積の広いむし歯や、歯と歯の間の力のかかる部分を詰めるときは、歯を削ったあとに型どりをして、その形に合わせたインレーという詰め物で歯の形を再現します。インレーの種類は保険治療でできる負担額の少ないものだとパラジウムという銀歯による治療となります。自由診療であればセラミックと呼ばれる歯と色が近く取れにくい陶材や、ゴールドを多く用いた強度が高く柔軟性のある金属なども使用できます。口腔内とはいえ体に入れるものですので、人ぞれぞれにあった材料があります。当院では患者様と相談しながらどの材料によって使用するかを決めていきます。

インレーによる治療は約2~3回の来院が必要となります。

インレーは歯を削った形に特殊な接着材で接着するのですが、時間が経つと接着剤が劣化し、流れ出してくるためそのスペースに菌が入り込み中でむし歯ができてしまいます。定期的な検診で隙間がないか、隙間から虫歯になっていないかを確認しましょう。

大きなむし歯の場合

歯の深い部分まで詰め物になっている場合は、歯髄の近くからむし歯ができるため、次に治療をするときはC3になっており、歯髄を取らないといけない場合もあります。歯髄を取った歯は、歯が弱くなり割れやすくなります。また歯の頭の部分である歯冠の歯質を多く失っているため、歯の内側から力のかかりやすいインレーのような詰め物ではなく、歯を覆い、力が外向きにかかりにくいような被せもの(クラウン)を作る必要があります。保険ではパラジウムをメインに使った銀色の歯か、ハイブリットレジンというプラスチックの材料を使ったクラウン(適応有)となります。※前歯の場合は見える部分に樹脂を貼り付けた前装冠というものを使用します。

クラウンも、インレーと同じように材料によって特徴があります。自由診療には目立たず自然に見えるセラミック、白くて強いジルコニアセラミック、咬み合わせの力に強いゴールドを使ったもの、保険で使用できるものを含めてインレーよりも種類が豊富です。担当医と相談しながらご自身にあったクラウンを選んで下さい。

根っこの治療を行ない被せを作る場合、治療回数は大体5~7回ほどを要します。この治療を受けると、数年後に根っこが再度むし歯になったり、力がかかって支えになっている根っこが折れてしまったり、根っこの先に細菌が入り、骨を溶かして炎症を起こすことがあります。この場合再度同じような治療を行うか、歯の根っこの状態によっては抜歯になる可能性もあります。定期的に問題がないか、検診を受けることが大切です。

むし歯の再発を防ぐため

むし歯の治療は、「治療」といいながらも削った歯が元に戻るわけではありません。そこはあなた自身の体の一部だったものから人工物に変わっているだけだであり、むし歯という症状がその歯から一旦なくなるだけのことです。一度治療した歯は、またいつかむし歯になってしまい、再治療を行はなければならない可能性は低くありません。治療を繰り返すうちにどんどん元あった歯質は失われていき、最終的には歯を抜かなくてはならなくなることも有り得ます。自分の歯を守るためにはまずむし歯にならないこと、もしむし歯になったら早めに治療すること、むし歯を繰り返さないための対策を講じることが重要です。

アップル歯科では治療よりも予防に重きを置く歯科医院です。定期検診をご利用頂いたり、むし歯にならないための素材をご検討いただくなど、むし歯の繰り返しでは歯を失わないための治療を提供していきたいと考えています。そのためにもカウンセリングでしっかりと患者様のお話をお伺いし、患者様に合った治療法をご提案できるよう努めます。

治療した歯の虫歯の進行

この記事の編集・責任者は歯科医師の田中 公之です。
DR田中

むし歯の予防法

むし歯を削った後の修復方法

健康な口腔内環境とは

一度でもむし歯になってしまうと、同じ歯や周りの歯もむし歯になる可能性を考慮する必要があります。むし歯に対して一番効果的であなたの歯を長く綺麗に使っていくために一番必要なことは何でしょうか。
それは、むし歯の予防です。むし歯ができないようにしっかりケアを行い、一度もむし歯になったことがない歯が多いほど、そのお口の中は健康と言えるでしょう。

また、一度むし歯になっていしまった歯も、綺麗に治療を受け、むし歯の予防をしっかり行なっていれば、むし歯菌の増殖を防いだり、歯質を守ることができます。歯を守る方法をしっかりと身につけ、健康な口腔内環境を保ちましょう。

むし歯の予防法とは

まずは歯磨き

当たり前ですが、歯磨きをしっかりして、歯にずっと菌がついている状態を減らすことで、むし歯のできやすさは変わります。歯磨きをするといっても、その人の癖や教えてもらった人の傾向によって磨き方が異なりますので、実際磨けているかどうかは歯科医師や歯科衛生士が目視で確認しなければわからないところもあります。

特に歯と歯の間や一番奥の歯、歯並びの悪い部分は磨き残しができやすく、むし歯になりやすい歯と言えます。歯科で磨けていない部分の磨き方や、フロスなどの清掃補助器具の使い方を学び、実践しましょう。また、歯磨き粉にはフッ素が含まれているものがあります。むし歯の初期には、このフッ素の働きで歯質が再石灰化し、元に戻ることができ、むし歯の進行を抑える働きがあるため、フッ素を含む歯磨き粉の使用はむし歯の予防につながります。

習慣・飲料・間食

むし歯菌は、糖分を菌の中に取り込み、それを代謝することで酸を出します。歯は、酸に弱く溶けてしまい、これによりむし歯ができます。お口の中の菌を0(ゼロ)にすることは不可能ですが、この菌の栄養となる糖分の摂取を控えることでむし歯菌の増殖を予防することができます。

また、糖分を取ること自体が問題なのではなく、糖質食品や飲料のお口の中に停滞している時間が長いことがむし歯が多くできやすいということがわかっていますので、糖質を含むものを頻繁に取らないようにすることも、むし歯予防になります。食べ物を食べると食べ物そのものの酸や細菌が食物に含まれる糖を取り込もうと出す酸によって口の中は酸性になります。つまり頻繁に口腔内に食物が入っている状態が続くと、お口の中が酸性の状態が続くということになります。この酸がむし歯の原因となり歯の脱灰がはじまり、むし歯ができてしまいます。

これらからむし歯を防ぐ具体的な方法でいうと、お菓子やアメ・ガムを常に摂取し続けないことや、糖分摂取後はこまめに歯磨きを行うことです。

咬合力(噛む力)からの予防

意外に知られていませんが、自分のお口の噛む力がむし歯の原因となることがあります。詰め物あると、噛む力により接着剤が剥がれ始め、隙間ができてしまいます。また、治療していない歯でも、細かいひび割れができてそこに菌が入り込むことでむし歯になることがあります。特に寝ているときは強く噛みしめたり歯ぎしりをすることにより、起きているときよりも歯に力の負担がかかります。これらを予防するためには、マウスピースを着けて就寝することを私たちはお勧めしています。咬む力による歯のダメージを防ぐことで隙間やヒビ割れを防ぎ、そこからのむし歯の予防にも繋がります。

1998年に徳島大学で行われた実験(※1)では、睡眠時に無意識下で発揮される咬合力を定量的に測定した結果では、睡眠時咬合力の最大値は81.2kgfで、覚醒時における最大随意咬合力の111.6%にも及んだとされています。近年では、TCHという起きている間でも上下の歯を接触させる癖が歯にダメージを与えていることもわかってきており、噛む力に対する予防を行うことが、むし歯だけでなく歯のヒビやチップ(破損)、破折から守るために重要となります。

歯科での予防

むし歯は自分で気づいたときにはすでに大きくなってしまい、歯を削る必要があることも多い病気です。ですから、歯科でむし歯が大きくならないうちに見つけ、早めに治療することが大切です。 3〜4ヶ月に1度程度、歯医者で予防を続けることでむし歯を防いだり早めに見つけたり、歯石や歯垢をキレイに落とすことで菌の数を減らしたりコントロールすることができます。
また、自分の口の中の状態、つまり、むし歯ができやすいのか、できにくいのか、むし歯になりやすい部分はどこなのか、どういうケアの仕方が自分に合っているのかなどを知り、専門的なアドバイスを受けることもむし歯の予防には必要です。予防歯科ではご自身ではとれない歯石や歯垢を除去し、むし歯菌の住処をなくすとともに、フッ素の塗布やむし歯のチェックも行うことが可能です。アップル歯科ではこの予防歯科を大切にした診療を行っております。

※1)むし歯は自分だけでなく他の人にも移る感染症である

この記事の編集・責任者は歯科医師の田中 公之です。
DR田中

むし歯治療に関するQ&A

むし歯治療についてのよくある質問

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Q.むし歯治療は痛いですか?
A.ほとんどのむし歯治療において麻酔をして行います。しっかり麻酔が効いていれば痛みは感じない事が多いです。ただ、治療中の不快感や、麻酔の効きやすさは患者様それぞれ違うので何かあればすぐ治療を中断しますので手を挙げてお知らせ下さい。
Q.黒いところがあるのですがこれはむし歯ですか?
A.黒いからといって全てむし歯であるわけではありません。金属の詰め物などによる着色や樹脂で治療したところにステインが着色して黒くなっている場合もあります。しかし、ご自身では判断が難しいと思いますので受診をお奨めします。治療が必要かどうかは、レントゲンなどから判断できますので、ご自身で判断せずまずはご相談下さい。
Q.むし歯と言われたのですが、神経を残すことは可能ですか?
A.むし歯になったからといって必ず神経を取る処置が必要なわけではありません。抜髄(神経を取る処置)が必要かどうかは、むし歯の大きさによって判断します。出来る限り残せるよう治療に努めますが、難しい場合は患者様に治療方法をご説明した上で神経を抜く処置を進めます。保険治療では神経を抜く治療になってしまう場合でも、自由診療であれば神経を残せる可能性のある治療法もご提案できることもありますので、歯科医師と相談しながら治療を進めていきましょう。
Q.全て白いもので治すことは可能ですか?
A.自由診療であれば可能なことが多いです。治療歯によって保険内で白く出来るものもありますが、セラミックやジルコニアなど、天然歯に見た目が近い素材は自由診療になります。
Q.詰め物が取れた場合はまたつけれますか?
A.歯と詰め物の状態によります。詰め物が欠けていたり、歯がむし歯になっていることも多いので一度状態を診させていただいた上での判断になります。
Q.削らずに治療できる方法ありますか?
A.ございます。自由診療にはなりますが、薬剤を使用してむし歯を除去する方法などいくつかあります。ただし、そのほとんどが極々小さなむし歯に限られることが多く、ご自身で気づくような大きさになってしまったむし歯に適用することはできないことが多いです。まずは一度検査に起こし下さい。
Q.むし歯はキスで感染りますか?
A.はい。感染ります。むし歯はむし歯菌によって引き起こされる感染症です。キスによって交換された唾液を返してむし歯の原因菌とされるミュータンス菌なども相手の口腔内に移動することになります。キスだけでなく、ジュースの回し飲みや、大人が使ったお箸で子供にご飯を食べさせることもむし歯感染の原因になります。だからといって、キスをするなというわけにもいきませんので、大切な人にむし歯を感染さないよう、日頃からをキレイに保ち、口腔内の菌を少なくしておく必要があります。当院ではお口の菌のコントロールのお手伝いも行っております。
この記事の編集・責任者は歯科医師の内藤 詩です。
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