では、歯の根の治療にはどのようなものがあるのでしょう。歯の根っこの治療といっても、歯の状態によって治療方法はいくつかあります。大きく分けると、非外科的歯内療法と、外科的歯内療法の2つに分けられます。通常行う歯の根の治療は非外科的歯内療法というもので、歯冠側から根っこの中に細い器具を入れて行う治療です。
この中でも、歯の状態によって行う呼び方が変わります。抜髄処置、感染根管治療 の二つです。
歯髄炎の場合
①むし歯が歯の神経(近く)まで到達した状態。
②まずは虫歯を取り除きます。
③特殊な器具で神経を取り除きます。
④お薬を用いて空洞を封鎖し感染を防ぎます。
⑤神経の代わりに土台を入れて補強します。
⑥出来あがたった被せ物(クラウン)を調整し、接着します。
根尖性歯周炎の場合
①歯の根の先に膿がたまってしまった状態。
②特殊な器具を使って古い薬や病巣を取り除きます。
③薬品を使って根を洗浄し、空洞を封鎖します。
④土台を入れて補強します。
⑤出来あがたった被せ物(クラウン)を調整し、接着します。
このように手順が多く回数がかかることが根っこの治療の特徴です。治療回数は(1)の抜髄の場合は治療が完了するまで5~10回(保険診療の場合)、(2) の感染根管治療の場合はもっと回数がかかります(5〜15回)。
治療の成功率について
また、やる内容や使う器具には大きな変化はないのですが、治療の成功率が違います。上でも述べているように、根っこの状態は人によっても、歯によっても様々なため、できるだけその数を減らすことができますが、完全に菌を死滅させることは不可能です。(1)のような治療では、歯髄にいる菌の数が少なく、場合によっては根っこの先まで菌がいないため、治療後に感染した部分が残る可能性が低いため、成功率が高くなります。
②の治療では、感染が歯髄の根っこの先まで及び、根っこの先の外にも感染が広がっているため、器具でしっかり清掃したとしても、細菌がどこかに残ってしまう可能性が高く、特に、根っこの先の炎症がひどい場合は、器具はそこまで綺麗にできないため、根っこの外に細菌が残るケースもあります。この場合は治療後にも炎症が残り症状が改善しない、もしくは、症状が時間をおいて再発する可能性も高くなります。
また、一度すでに根管治療を受けていて、再治療を行う場合は、以前の治療で器具で触れていない部位がある場合、そこに細い器具を入れていくのはとても難しくなり、治療の精度が落ちてしまいます。Sjogrenらの研究(※1)によると、治療における予後成績良率を抜髄治療では98%、感染根管治療では86%、再治療では62%としており、その違いがあることが明らかとされています。このため、感染が広がり根っこの先に炎症が及ぶよりも前に治療を行う方が、その後の歯の状態は良くなります。
外科的歯内療法
以上のような非外科的歯内療法を行なっても成功しない場合は、外科的歯内療法が行われます。主に歯根端切除術と、意図的再植術です。
まず、歯根端切除術は、根っこの先の炎症が治らない場合、根っこの先にある感染物を根っこの先ごと取り除く治療です。歯肉を開き、骨に穴を開けて感染部を治療します。
この治療ができないような場所が感染している時、または歯の長さが短い場合は、一度歯を抜き、感染している部分を取り除き、また歯を元に戻すという意図的再植術を行うこともあります。
どちらも外科的な侵襲が伴う治療になります。こういった治療もできない場合は歯を取り除いてしまう抜歯という治療を行います。
※1)抜歯の主原因別の割合で最も多かったのは歯周病(37.1%)、次いでう蝕(29.2%)、破折 (17.8%)、その他(7.6%)、埋伏歯(5.0%)、矯正(1.9%)の順となった。
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